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Salle d’Aikosoleil

バレエ史についての備忘録 日々の食について

音舞の即興界『寂氷の花』~舞踏家 田中誠司WSとパフォーマンス 

特に舞踏が好きなわけではないけれど

 2月8日に奈良に拠点をおいて活動を展開している田中誠司さんのWSとパフォーマンスに夫と一緒に立ち会った。夫はパフォーマンスを退席したが、WSの時間を一緒に過ごして、とても良い時間だったとの感想。

 

 正直言うと、特に舞踏という表現が好きなわけではない。

 

 はじめの舞踏体験は、20代の頃にお世話になったダンスジャーナリストの長谷川六さんに芦川洋子さんのアトリエに連れて行ってもらったり、笠井叡さんのニジンスキーだったか、そんなタイトルの映像を見せてもらったこと。

 芦川さんのアトリエでの時間は「強烈」、それが体に残っている。笠井さんの舞は、いまでもあのテレビのブラウン管の中から飛び出てきそうな姿を思い出すくらいのエネルギーで、好みをつべこべ言う隙がない「圧倒的」な表現だった。

 でも、しつこいけど「舞踏が好き」というわけではない。舞踏に詳しい人とか好きな人には悪いけど、この言い方が私にとって一番しっくりくる。 

 じゃあ、どうして見るのか?

 

 まずは、誠司さんの舞に最後に立ち会ったのは、大野一雄先生が亡くなった後、東京の森下スタジオでのパフォーマンスだったと思う。その時は、家族4人で立ち会った。

 細かいことは覚えていないけど、彼は舞う中で「お・お・の・か・ず・お!」と叫んだ。終演後に、「どうして?」と聞いたら、彼は「その名前が出てきた」と言った。なんかいい!と思った。

 初めての出会いも印象的だったのだけど、この時の「出てきた」ということが、とっても自然で、素敵だと思った。

 田中誠司という人は、自分のからだを通して「いま」を語る人、「いま」を伝える人だと確信した瞬間だったのかもしれない、いま思うと。

  

 何か表現に惹かれる私の判断基準は、きっとその表現者の「いま」が

その時間の中で生ききられているかということなのだろう。

 

 数年たって、私自身もいろんな意味で変化していると思う。そして、今回のタイミングで再会したいと思った。

 

 フェイスブックにも書いたこと。

これは2月9日月曜日の言葉だから、24時間ほど過去の言葉。

 

目白にある古民家ゆうどにて、
大好きな舞踏家田中誠司さんの
公開ワークショップとパフォーマンスに
立ち会った。

数年ぶりの再会で、
いろんな意味で大きくなった姿が
心から嬉しかった。

古民家ゆうどの空間が、
まるで田舎の実家に戻ったようで、
庭に聳える赤目柏の木の
繊細でエネルギーに満ちた
立ち姿が、心に深く刻印された。

あの時間には
「立ち会う」という言葉が合う。

久しぶりに夫婦で、
出会ったころに住んでいた地で、
一緒に座禅をしていた時間に戻ったようだった。

6人のワークショップ参加者が、
赤芽柏の樹霊が見守る中、
時間を追うごとに変化してゆくさまを
見つめることができるその感触が、
妙に心地よい。

古民家の呼吸する木の空間で、
立つ、歩く、そして、
方向を変えて、地に戻る。
そして、再生というシンプルな
ムーブメントの中に、
舞う人と見る人の
「いま」が生きていた、
そんな時間だった。

ワークショップ後は、
田中さんとトランペットの川村祐介さん、
ソプラノサックス&ディジュリドゥ安藤裕子さんの即興セッション。
ソプラノサックスは、まるで尺八の音色。
川村さんのトランペットの奏法も
まるで日本の笛のように響く音を出す。

田中さんの「切実なからだ」は両性を超え、

彼の「いま」を語り切っていたように
伝わってきた。
感謝☆

  

 舞踏の内容がどうとかは、他の人に任せる。 

 私にとって、田中誠司さんとあの古民家「ゆうど」に集った人たちでしか

創造できない、視線の糸が縦横に張ったような緊張感の中でのすさまじい「いま」があった。

 

WS

 受講者の「メタモルフォーズする身体と空間」を目の当たりにする。

 

「メタモルフォーズ~変容」という言葉。

 ずっと知っていた言葉だけど、自分の身体で実際的に感じ始めたのは、ごく最近。

 私なりの理解だけど、稽古(バレエ)をしていると、始まる前の自分と稽古が終わった後の自分が、「変化」している感覚が毎回ある。

 自分自身の身体の変化は、おのずと同じ空気を吸っている人たちやそこの空間をも違う質感に変えてゆく感じがする。

 この感覚を、田中誠司はWSの中で、受講生に体感させる。 本当にシンプルな動きでも、集中力、自分との向き合い、空間との関係性に意識を向けて営むだけでも、ものすごいエネルギーと充実した世界が生まれる。

 

 ★即興の時間

 古民家ゆうどの座敷を舞台に、庭が素晴らしい舞台装置、いや装置という言葉ではあの雰囲気は表せない。庭が花道のようであり、借景となり、内と外の空間が混じりあう。

 赤芽柏の木が地から光を注ぐように、可憐に佇む和紙のような紙で仕込まれた一輪の白い花と白い鳥。そこに数匹の猫が動き回り、赤子の鳴き声が響きわたる。

  

 屋敷の外から田中誠司がゆったりゆったり、門をくぐり、

外の庭では川村さんが演奏し、座敷で安藤さんが演奏し、

ガラス越しに音を響き合わせる。

 

 冷たく引き締まった空気の中に、乾燥した音が響き、

生々しくも霊性に満ちた田中さんの身体が世界を映す。

 

 なんという「生」の時間。

 

 「いま」は、「過去」と「未来」の紙一重のところにある。

 

「いま」に立つ私は、

「過去」を受け入れきれてない自分と向き合っている。

「過去を受け入れきれてない自分」という「いま」。

 

 あのゆうどの空間で、遠くに見えたもの。

 それは、大切な人たちの笑顔。

 その「未来」に向かって、勇気を振り絞って、

 一歩、一歩、一歩、一歩のかなたに。

 

 呼吸。

 

 

<パフォーマンスに関しての詳細はこちら↓>

2015年2月8日(日)

Imaginary Cafe ~想像的民族料理店~ Presents

音舞の即興会「寂氷の花」

開場 14時半 開演 15時

第一部 田中誠司 公開舞踏ワークショップ (WS参加者は主催者が事前に決めています)
15時~16時半頃

お茶休憩

第二部 音と舞踏の即興公演
17時半~18時20分頃

田中誠司 舞踏
川村祐介 トランペット
安藤裕子 ソプラノサックス&ディジュリドゥ

お代:3000円 お茶菓子付き

場所:古民家ギャラリー「ゆうど」 (東京都新宿区下落合3-20-21)

予約:tanakay@gmail.com(田中庸平)

企画:田中庸平(Imaginary Cafe)

田中 誠司
1977年奈良市生まれ。大野一雄舞踏研究所にて、大野慶人に師事。以来、日本、ドイツの劇場、イベントなどで、ソロ、デュエットともに精力的に公演を続ける。2011年2月、郷里の奈良に「田中誠司舞踏スタジオ」を開設。

川村祐介
東京生まれ。美術大学を中退後、即興演奏を中心とした活動を始める。陸上競技者であった経験などから身体への興味が強く、やがてそれは土地固有の身体性やそれに伴う文化への意識と繋がり、活動の核ともなる。自身のトリオ「參重奏」、齋藤秀行氏との「voyager ensemble」を主宰。

安藤裕子
MUSQIS(ムスキス),Mooons(ムオーンズ)H onkitrio(ホンキトリオ)他、数多くのユニットや即興で演奏活動するサックス、クラリネットディジュリドゥ奏者。
近日、自主音楽レーベル 「MOOON RECORDS」立ち上げる予定。