Salle d’Aikosoleil

バレエ史についての備忘録 日々の食について

重力/Note  +51『アビアシオン、サンボルハ Aviacion San Borja』体感

      「前衛」を前に押し出さない平成の「前衛」演劇

昨夜(2017年9月1日防災の日)に、京急本線黄金町にある若葉町WHARFという空間で、重力/Noteによる『アビアシオン、サンボルハ Aviacion ,San Borja』を体感。はじめて降り立つ街というのも楽しい。本当はもう少し早めに行って、街をうろつきたかったのに、お茶を飲む余裕はなかった。

 

着いた時間はもう薄暗かったから、大きな川があって、大きな橋を渡って、伊勢佐木商店街を通って、一応、本屋さんで小屋近くにあるはずの映画館ジャック&ベティの場所を確認。なるほど、なんとも風情がある街並み、どこか懐かしく、横目に「横浜風俗 ミスター ダンディ・ダンディ」というお店を眺めて、会場前に到着。ザ・方向音痴なので会場に着いたら、もう動かないのがいい。

 

空間は、倉庫っぽいともいえる、天井の高い、むき出しのコンクリートの壁。壁、床は白く、表現の場には平均台のようなものがあって、若干の空間の仕切り。その向こうに木目のむき出しの大きなパネル。そして、両隣に赤いバックステージが見える。そこから登場人物が出入りする。

 

口上、演出家<わたし>を具現する牧凌平(1991年生)が「携帯電話、音の出るものの電源を切るように」と。そして、平均台のような横長の台の上に、<わたし>を中心に左側にペルーに移り住んだ祖母<女>(平井光子1982年生)、右側にセキ・サノ<男>(立本夏山1982年生)が三人並んで、不敵な笑みを浮かべて立っている。

私の目線は、三人の足、六つの足から始まり、脚、胴体、顔とそれぞれの動きや表情から、登場人物の年齢やら精神やらを感じ取っているようだ。三人三様の身体とともに、時間と空間を異なるところにシフトする。

戦前戦後にかけてと思われる時代を東京、沖縄、ペルー、ロシアなどを巡る旅を辿り、それぞれのルーツに食い込んでゆく。そして、見る側の人間のルーツへも迫ってくるように感じられた。

 

 

私の中で、このような身体感覚は、どこへ向かうかというと、25年くらい前に見たポーランドの演出家タデウシュ・カントールの「芸術家よ、くたばれ」とか、ヨーゼフ・ボイスの言葉とか、政治的であり、社会批判的であり、「前衛」である姿勢、むき出しの尖った先端であり、体温が低め。

でも、この『アビアシオン サン・ボルハ』は、柔らかく、どこか温かい。それでも、<わたし>の持つ強い時代とのズレ、生きる場とのズレ感が、ここにいる<わたし=イケダアイコ>という存在とその取り巻く環境に重なってくる不思議な感触。

これだね、昨日「不思議な感覚」と感じたこと。もっと「感触」な。そんな感じ。久しぶりに「言葉の演劇」でここまで書いた。

 

登場人物は、消費者金融プロミスの創設者神内良一(1926年8月15日生~2017年6月27日没)、演出家でメキシコ演劇の父と呼ばれた佐野碩(1905年1月14日生~1966年9月29日没)、ロシアの演出家メイエルホリド、俳優で演劇のメソッドを確立したスタニスラフスキー、戯曲作家チェーホフスターリンほか。 

 

今日の夜公演、明日、明後日まで。見てみてください。「前衛、万歳!」なんて言ってみたくなるw公演詳細は、こちら↓

重力/Note – 公演情報と活動の記録

 

原作:神里雄大(1982年生)

構成・演出:鹿島将介(1983年生)