「近くて遠い」を感じる戸嶋靖昌の宇宙∞
書かずにはいれなくて☆彡
戸嶋靖昌の世界に触れるため
スペイン大使館へと赴いた。
ある方の紹介で、戸嶋靖昌という画家の存在を知る。
友人を誘い、この世界に誘えるというのも特別な存在。
誘い誘われて大使館へ。
雨だった。
雨が良かった。
絵を見終わって、雨降る世界に出て、
戸嶋の絵を見て、陽光が燦燦と注ぐ世界に出るよりも、
雨の薄暗い、冷たい空気の世界に出る方が、
ふさわしい気がした。
大使館に入ると、白い長い廊下がギャラリーへと導いてくれる。
まるで産道に吸い込まれるように。
具象と抽象の狭間にあるような絵画たち。
ところどころに人物のブロンズ。
戸嶋の遺品には、持ち主の体温がそのまま残る。
壁から覗く視線が、あちらの世界とこちらの世界を
つなぐかのように見える。
声が、平面の絵画からの声が、
地響きのように体に振動し、声色は柔らかで
深く、心をなでる。
グラナダ~戸嶋が長く生きた土地
風景は、近くて遠い。
遠くから見る景色と近くから見える景色が違う。
人間もそうかと思う。
どちらも真実であり、戸嶋と私の出会いの場。
筆の息遣いが、命を感じさせる。
平面の絵に身体の感触がある。
深い深い黒と暗さが、明るい白と光を
際立たせて、温度を感じさせるものがある。
湿度、空気の乾燥した感じ、風が頬を伝う感じ。
木々のざわめきや水のせせらぎといった音も耳に残る。
グラナダは行ったことがない。
というか、スペインに行ったことがない。
でも、なぜか懐かしく、穏やかな気持ちになる。
激しさの中の静寂。
近くて遠い。
明るい、暗い。
しっとりとして、乾いた。
ありとあらゆる逆の世界が、
融合、混在する世界。
激しく魂を揺さぶられ、
心の中に昨日から戸嶋が生きずづいてしまったようだ。
命の宿る作品は永遠に生き、
作家はその作品の中で生き続けるということ。
肉体がないのに、この存在感。
会ってもないのに、会ったよう。
スペイン大使館での展覧会は、11月28日まで。
それ以後、戸嶋に出会いたい方は、麹町の記念館へ。