Salle d’Aikosoleil

バレエ史についての備忘録 日々の食について

バレエ『エスメラルダ』のあらすじ【第一幕】♪

そもそも『エスメラルダ』の物語って?

 

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 エスメラルダを演じるカルロッタ・グリジ(1844年 ロンドン)NY公立図書館蔵

 

 前の記事を読み返して、バレエのことをあまりご存じない方には、少し不親切だったと反省いたしました!そして、ある意味、自分もそもそものバレエ『エスメラルダ』の物語をしっかり把握していないということにも気づき、整理することにします。

 原作は、ご紹介したようにヴィクトル・ユーゴーという19世紀ロマン主義文学を代表するフランスの作家の『ノートルダム・ド・パリ』という小説です。

 舞台は、15世紀のパリ。

 <主な登場人物>

 エスメラルダ 美しいジプシーの踊り子

 カジモド ノートルダム寺院の鐘つき男

 クロード・フロロ ノートルダム寺院助祭

 ピエール・グランゴワール 貧しい詩人

 フェビュス・ド・シャトーペル 王室射手隊長

 フルール・ド・リス(「百合の花」という意味) フェビュスのフィアンセ

 フルール・ド・リスの母親

 クロパン 浮浪者集団の長

 

 15世紀のパリの街の雰囲気や市民の生活を背景に、登場人物たちの人間模様が生き生きと描かれ、フランスのこの時代で生きるそれぞれの身分や階層の差にまで、鋭い視線が向けられています。

 

 少し脱線しますが、ずっと気になっていたこと。鐘つき男の名前が、カジモド。変な名前だなってずっと思っていたのが、この度理解できてスッキリしました。

 カジモドの名前の由来は、どうやら二つあるようです。カジモドがノートルダム寺院の前に捨てられていた捨て子で、復活祭の次の日曜日(クァッモド祭の日)に、助祭長のフロロが拾ったことから「クァッモド祭」にちなんでカジモドと名付けられたとのこと。聖職者らしい名付け方だと素直に思います。

 もう一つは、quasi-modoのquasi の意味が<ほとんど>ということで、人間としてはできそこないだけど、<ほとんど人間>というj非常に聖職者としては心の裏側を表す発想です。これはカジモドの容貌にちなんだものとの解釈です。

 エスメラルダは、恋をしてはいけない相手の王室射手隊長フェビュスに心を奪われ、そこに貧しい詩人グランゴワールやカジモドの感情も絡まってくる、、、、。

 この時代特有の主題、宿命の女(ファム・ファタール)を巡る物語とも言えるでしょう。

   

 【第一幕】<第一場>

  奇跡の中庭 Cour des Miracles(←なんと「悪党の巣窟」の意味)

  ~とある小さな広場

 

  日没。行商人たち、裕福な階級の人々、一般の市民たちも足早に市の立つ広場から去ってゆく。夜のとばりが下りるとともに、そこは「悪党の巣窟」~つまり、浮浪者たちやジプシーたち、物乞いたちなどの王国~に様変わりするから。

 グランゴワールは,広場に迷い込み、盗賊たちに捕まってしまう。貧しい詩人に金目のものがないとわかると、浮浪者たちは彼を死刑にすると告げる。しかし、彼らの掟によると、彼と結婚してくれる女性がいれば、彼の命は助かるという。とはいえ、そんなことを誰も望みはしない。そして、グランゴワールは絞首刑となる。この瞬間に、魅力的なエスメラルダがやってくる。 

 何が起きているのかを知ると、彼女は、彼の妻になることで、その不運な男を助けることに、すぐに同意する。グランゴワールは、この上ない幸せものとなる。二人は四年間結婚生活を送った。

 浮浪者たちの習慣にのっとって、グランゴワールが、割った水差しのたくさんの破片が飛び散り、お馴染みのどんちゃん騒ぎが始まる。

 ずるがしこい助祭長フロロは、ひそかにエスメラルダに欲望の炎を燃やしていて、浮浪者の親分クロタンに彼女を誘拐するようにそそのかす。そして、鐘つき男のカジモドにそれを実行するように命じる。

 悪党たちが、巡視隊に止められる。隊長のフェビュスがカジモドを逮捕するように命じ、美しいジプシーの娘を助ける。エスメラルダは、フェビュスの気品と美貌のとりことなり、深く彼に感謝する。

 フェビュスは、エスメラルダに思い出の品として彼のスカーフを渡す。そして、彼は、心優しい娘の頼みでカジモドを釈放し、彼女を口説こうとするが、エスメラルダはこっそりと立ち去る。

 

 <第二場>

 新婚夫婦~エスメラルダの部屋

 物思いに沈んだエスメラルダは、フェビュスにもらったスカーフを見つめている。

彼の名前を表すアルファベットの文字を取り出して、彼女の心にとって大切なこの言葉の前で踊る。

 グランゴワールが登場する。彼はエスメラルダを抱きしめようとする。夫としての権利を主張するかのように。しかし、エスメラルダは彼に、自分はただ彼を死から救いたかっただけで、妻になることは決してないことを告げる。この不運な”夫”は、自分の宿命を受け入れ、エスメラルダの踊りのパートナーとなることに同意する。そして、彼女はグランゴワールに踊りを教えはじめる。

 エスメラルダは、グランゴワールに彼の部屋を見せ、そこに一人残す。

 彼女は、フェビュスのことを夢想する。奥の扉がゆっくりと開き、不気味なフロロの姿が現れる。怖れおののくエスメラルダは、フロロに立ち去るように頼む。しかし、フロロはひざまずき、エスメラルダに、自分の溢れる思いを受け入れてくれように懇願する。

 彼女は軽蔑するように拒絶する。そして、フェビュスの名前を指さして、「この男性こそ私の愛する人です」と言う。

 引き下がることなく、フロロは求愛し続け、エスメラルダは短剣を抜く。カジモドが、ジプシーの娘の手を止めるが、自分に見せてくれた彼女の優しを思い出し、エスメラルダを逃がす。

「汝に災いあれ!彼に不幸が降りかかるように!」とフロロは脅し、そして、エスメラルダが落とした短剣を拾う。

 やっぱり、映像見たいですね。こちらもボリショイ・バレエ団のもので、

まだオシポワがまだ在籍中のものです。

www.youtube.com

 

【第二幕】では、いよいよ「ディアナとアクティオン」のパ・ド・ドゥが披露されます。どんな形で踊られるのでしょうね。続きは、もう少しお待ちください☆

  

 ※あらすじ原文はこちらですので、私の訳で変なところがあれば、

  どうぞご指摘下さい。

  Esmeralda. Synopsis

 

 ★ちょっとバレエ史研究者らしく、「奇跡の中庭」について★

 このCour des Miracles という言い方がいつごろからされているのは、わかりませんが、私の知る限り、というか、この言葉を見てすぐに、ルイ14世が太陽を踊った有名な『夜のバレエ』を思い出しました。

 そのバレエに、この「奇跡の中庭」が登場します。その絵がこちらになります。

 1653年に初演されたバレエ『夜のバレエ』の絵です。

 フランスのバレエ史家マリ―=フランソワーズ・クリストゥの著作『17世紀の宮廷バレエ』という本(池田所有)からの引用です。

 

 一枚目が見開きのもので、二枚目が左側、三枚目が右側で、なんとなく古い時代のパリの街の雰囲気の悪い一角の様子がわかりますでしょうか。

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「奇跡の中庭」の言い方の由来が気になります(*^▽^*)