バレエ『エスメラルダ』のヤギ🐐
演出のエピソード
バレエ『エスメラルダ』にヤギが登場するのは、1844年の初演の頃から記録があります。こちらの絵をご覧ください。
このバレリーナは、『エスメラルダ』の最初演の時のバレリーナ、カルロッタ・グリジではないのですが、やはり、イタリア人でこの当時グリジともライバルだったファニー・チェリートです。グリジの後に、初演版(ジュール・ペロー版)の主役を演じたバレリーナです。グリジとチェリートが、あるバレエ作品のソロを踊る順番で大ゲンカした話はとても有名(;'∀') ま、イタリア人女性同士ですしね(笑)
本題は、このヤギさんですが、この1844年頃に上演されたころに、生きたヤギを舞台に登場させたかどうかは、ちゃんと確認していません。
生きたヤギを登場させたことが確かなのが、1890年代のロシアです。マチルダ・クシェシンスカヤという皇帝の愛人でもあったバレリーナが、どうやらヤギをペットとして飼っていて、自分の飼いヤギを舞台に登場させたというのです。
この証言は、ボリショイ・バレエ団で『エスメラルダ』の復元を行った、元芸術監督のユーリー・ブルラーカが話していました。
ボリショイの復元版ではこんな感じに♪
気になりまして、そのクシェシンスカヤが非常にかわいがっていた、同じ帝室劇場バレエ団のバレリーナ、カルサーヴィナの回想録を開く。
あった!あった!カルサーヴィナの書いた『劇場通り』という本の163ページです☆彡
カルサーヴィナは、クシェシンスカヤのストレリナの別荘に招かれて、そこで話題のヤギと遭遇したようです🐐
以下、引用です♪
「・・・・マチルダは親しい友達をあと何人か呼んで、ホステス役を完璧にこなしていました。海のすぐそばにある庭園は広々としていて、山羊が何頭かいました。『エスメラルダ』にも出た彼女の一番お気に入りの山羊もマチルダになついていて、まるで犬のように彼女の後を追い回しています。マチルダは、一日中私をそばから離さず、絶えず細かく気を配ってくれました。・・・・」
ちなみに、このクシェシンスキャというバレリーナ。皇帝の愛人という立場を利用して、さまざまな陰謀に加担し、振付家のマリウス・プティパにも注文を付けるなど、わがままぶりが何かと注目されるところもあります。
一方で、カルサーヴィナの方から見ると、非常に世話好きで、仕事に対してもオン、オフの切り替えが素晴らしく、情熱的な人間像も見えてきます。
その当時、ロシアでもイタリア人バレリーナが大活躍して、グラン・フェッテもロシア人のバレリーナでできる人はいなかったのでした。クシェシンスカヤは、当時人気だったピエリーナ・レニャーニ(『白鳥の湖』でオデットとオディールを踊った)がフェッテを回るのを見て、驚いて、猛研究の末、ロシア人バレリーナでグラン・フェッテに成功した初めてのバレリーナと言われています。
上の二枚の写真は、おそらく1899年にクシェシンスカヤがエスメラルダをサンクト・ペテルブルクの帝室劇場で演じた時のもの。
ヤギさん、結構大きいですね🐐