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Salle d’Aikosoleil

バレエ史についての備忘録 日々の食について

バレエ『エスメラルダ』の樹海

バレエ『エスメラルダ』といえば

 

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 ガラ・パフォーマンス(注)で良く踊られるこのパ・ド・ドゥ(主役二人の踊り)やコンクールでも定番の女性のヴァリエーション(一人の踊り)を思い浮かべる人が多いと思います。少しバレエに詳しい人だったら、「ディアナとアクティオン」のパ・ド・ドゥ(直接物語の筋とは関係ない)も思いつくでしょうか。

<アダージオ>

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<ヴァリエーション> 

 

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<コーダ>

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 有名なこの二つのバ・ド・ドゥは、どちらもロシアで産まれたものと考えて良いと思いますが、前者の方、つまり主役のエスメラルダと詩人グランゴワール(←男性がこの役柄かちょっと不安なので調べますね)の振り付けに関しては諸説ありそうです。そして、日本ではなかなか見る機会の少ない全幕版に関しての上演史の流れも興味深いです。

 

 このバレエが、バレエ作品として歴史に登場するのは1844年のことで、ロンドンで産声を上げました。振付は、ジュール・ペローというフランスの振付家で、主役のはイタリア人バレリーナで演技力に富んだカルロッタ・グリジでした。カルロッタ・グリジは、『ジゼル』のパリ初演(1841年)で一世風靡したバレリーナでした。

 

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 この絵に描かれているのが、振付家ペロー自身が演じる詩人(左側)とエスメラルダのグリジです。残念ながら、この当時の振付作品は残っていませんが、この振付家ペローは、ヨーロッパからサンクト・ペテルブルクの帝室劇場に活動拠点を移し、そこで同じフランス人振付家のマリウス・プティパの先輩振付家として働いていました。

 そして、帝室劇場(現在のマリンスキー劇場です)でも『エスメラルダ』を上演したのです。このペローの作品を再構成してマリウス・プティパが残したものが、今ロシアに伝わるものの下敷きになっていると考えて良いでしょう。

  こちらマチルダ・クシェシンスカヤ。帝政ロシアのバレエ界の代表的バレリーナで、プティパは彼女のために『エスメラルダ』のパ・ド・ドゥを作ったようです(振付は今のものとは違うと想像できます)。おそらく1898年頃のエスメラルダ姿のマチルダ様です☆彡このバレリーナがなぜかペットにヤギを飼っていたらしく、彼女がエスメラルダを踊った時に、舞台に登場させたようです。プティパ大先生も困ったかもしれませんね(;'∀')あとの映像でヤギさん出てきますw

  

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 ただ、作品も生き物なので、最初に作られたものがそっくりそのまま受け継がれているということではなく、それぞれの時代の雰囲気や演出、振付に関わる人の作法によって、作品の本質を変えない範囲での変化があるのは当然です。

 

 今見ることのできる演出として、ただいま来日中の国立モスクワ音楽劇場バレエ団による、ウラディーミル・ブルメイステル版の『エスメラルダ』(1950年初演、2009年に復活上演)やボリショイ・バレエ団で2009年にバレエ史研究で有名なユーリ・ブルラーカが、振付家ヴァシリー・メドゥヴェデフと協力して復元した1886年マリウス・プティパのヴァージョンなどがあります。

 復元に関してのお二人のインタビューが興味深いです。

 

blip.tv

 時代の産物の一つと言えるのがブルメイステル版『エスメラルダ』かもしれません。ソ連社会主義という時代の中で産まれた作品で、1950年に振付家ウラディミール・ブルメイステルによって振付、演出されました。ブルメイステルの作風の特長として、「演劇性が強い」と表現されるのですが、この表現にいつもひっかかります。ただ、ここに突っ込むと、ただでさえ『エスメラルダ』の樹海なのに、もっと大きな樹海に入ってしまうので、この辺で辞めておきます(;'∀')

 一言だけ言うなら、もともとバレエって「無言劇」なんですね。オペラが歌劇でしょ?バレエはそもそも舞踊劇として発展してきているわけですから。踊りで表現する演劇なんです。だから、本来「演劇性に富んでいる」わけですね(#^.^#)

 話をもとに戻して、ブルメイステル版の『エスメラルダ』ですが、数日前に東京で国立モスクワ音楽劇場バレエ団(ブルメイステルが監督を務めていたバレエ団)の公演がありました。

 ご覧になられた方も多いことでしょう。残念ながら私は今回見られませんでした。今、絶賛後悔中です。1950年に作られたこの『エスメラルダ』ですが、どうやら長い間上演されていなかったようで、2009年に久々の再演だったようです。こちらの記事に詳細が書かれていました。 

www.themoscowtimes.com

 この演出には、もちろん「エスメラルダ」と言われて思い浮かぶ有名な踊りのシーンは登場しません。ただ、音楽がプーニという作曲家で、バレエ音楽を多く手掛けているので、バレエを学ばれている方には耳に馴染むものも多いことでしょう。

 モスクワ音楽劇場の公式サイトの方に、一部紹介動画がありました。

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ついでに公式サイトはこちら

La Esmeralda

 

 全幕版の上演として注目する『エスメラルダ』は、先ほどもちらっとお話ししたボリショイバレエ団で、プティパのヴァージョンを再構成したものでしょうか。

 

 これはオシポワがまだボリショイ在籍中のものですね。2009年初演のファーストキャストは、アレクサンドローワだったようですが。 

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 個人的には、2009年の配役の中(アレクサンドローワ、オシポワ、カプツォーワ)では、カプツォーワが好みかな。

 このシーンは、まるで1844年のロンドン初演の絵が動き出したような感じ。

ヤギさん生きてますwバレリーナも大変!生きた動物と言えば、プティパが

ドン・キホーテ』の演出で、確か本物の馬のロシナンテを登場させたような記憶がありますw

 

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 樹海を迷子になってしまってるわけなので、特にまとめもなにもなく、迷子は続くのですが、ついでなので、何が本質か?と思ったら、まずはヴィクル・ユーゴーの原作を読んで、一休みというのもいかがでしょうか。

 

 

ノートル=ダム・ド・パリ (ヴィクトル・ユゴー文学館)

ノートル=ダム・ド・パリ (ヴィクトル・ユゴー文学館)

 

  あら、眠ってしまったかしら?まだまだ、さまよいは続きます☆彡

 あ~、やっぱり、「ディアナとアクティオン」も気になります。この踊りを

『エスメラルダ』に挿入したのは、マリウス・プティパ大先生ですが、今の形まで残っている功績は、ワガノワ・メソッドを整えたワガノワ先生のお力のようです。

 そもそも、どこから「ディアナとアクティオン」の発想がやってきたのでしょうか?

 

 (注)ガラ・パフォーマンスについて

  バレエ公演の形態の一つで、主役級の踊り手たちが、それぞれのバレエ作品の見せ場を踊り競うような公演のことをいいま。世界バレエ・フェスティバルなどが典型的なものです。

 

 【豆知識】蛇足ですが、バレエ用語は、フランス語です。なぜなら、17世紀にフランスの王様ルイ14世が、バレエの決まりをいろいろと整えたからです。

 ですから、パ・ド・ドゥPas de deuxは二人の踊りという意味で、Pas は、フランス語で「一歩」とか「歩幅」、そこから転じて「踊り」となります。英語でいうとstepです。

 deux が「2」の意味です。ですので、数字を変えると人数が変わります。ただ、一人の踊りの言い方は、ソロsoloとかヴァリエーションvariationという言い方になります。