Salle d’Aikosoleil

バレエ史についての備忘録 日々の食について

まさかのドイツ表現主義の森へ~迷子のダンサー奮闘記

元ヴッパタール舞踊団、市田京美との出会い

 遡ること早5年。

 いまでもあの時間が奇跡のように蘇る。

 2009年8月の東京ドイツ文化センター。

 ピナ・バウシュ率いるヴッパタール舞踊団に長年在籍し、

ピナ・バウシュの黄金時代の作品と時代をともに創り上げてきたダンサーの一人、

市田京美とそのパートナーのトーマス・デュシャトレのWSが開催された。

 いまだから話すけどあまり自分の意志ではなく参加した。ダンスジャーナリスト

長谷川六さんの薦めで受けたのだ。このWSの企画も長谷川さんだった。

 そして、ドイツ文化センターはピナにとっても縁のある場所だったと、

あとから市田が語ってくれた。

 

 この2009年という年は、市田にとっても忘れ得ぬ年となったことだろう。

そう、ピナ・バウシュが6月30日にあの世に旅立ってしまったのだ。

 

 WSの空気も特別だった、私の記憶では。

 

 前半は、市田によるクルト・ヨース(ピナの先生)のテクニックのクラスで基礎的な動きを身に付けてゆく。

   

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右からジャン・セブロン、クルト・ヨース、ピナ・バウシュ、エリカ・ファブリ。

ヨース振付『緑のテーブル』のリハーサル風景、1964年ころ。

 

 クルト・ヨースのテクニック?と思うけど、

 クルト・ヨースはドイツのモダンダンス界の中でも、クラシック・バレエの要素を取り入れたメソッドを確立した人。バー・レッスンなどはクラシックと通じるところもある。 

 テクニックの基本は、シンプルでニュートラルに、体の中から動く。動きの形を追うことが目的ではなく、形だけで動いていたらすぐに市田に見抜かれる。

 「まっすぐ立つ」、「歩く」、「呼吸する」という普通に生活する上でも当たり前のことが、実はまったくできていないことに気づく。そこからの出発。

 0からじゃなくて、私の場合はマイナスからの出発という感じだった。でも、もともと、「できないこと」に対して燃えるタイプで、やる気スイッチ完全オンとなってしまったのだ。

 マーサ・グラームのモダンダンスを3年ほど勉強していたけど、クルト・ヨースのコントラクション(身体を収縮させる動き)は、マーサのものよりきつく、クラシックバレエベースのレッスンを日常的に受けている身体には、かなり慣れるのに時間がかかる。5年経ったいまでも、毎日身体に叩きこまないと正しくできないと思う。

 

 受講生たちの必死な気持ちが、広いドイツ文化センターの会場に充満しているのを感じて、その時間と空間の密度に感動していた。

 

 受講前は、バレエ史だけではなくダンス史も勉強しているから、ドイツ表現主義もその舞踊についても知識はあった。クルト・ヨース=『緑のテーブル』、ドイツ表現主義=魔女みたいな踊り(メアリー・ウィグマンのイメージ)で、なんか感情表現が強すぎるな、というくらいの気持ちの向けようだったけど。

 

 ピナ・バウシュにも縁がなかったし、自分の好みの世界からは遠いとも感じていた。でも、せっかく東京にいるのだから、いる間にしか体験できないことをしないとと思い、1989年にヴッパタール舞踊団の『カーネーション』の国立劇場での公演のチケットを求めた。9月7日の公演だったと思う。なぜか記憶に鮮明なのは、祖父がその日に亡くなり、急きょ故郷に戻らなくてはならなくなったから。年号も昭和天皇がご逝去の年だから忘れない。軍人だった祖父は、天皇の後を追うようにこの世を去ったのだと、家族はみんな思っていた。

 

 その後、フランス滞在中にパリのテアトル・ド・ラ・ヴィルの前を通りかかったときに、偶然ピナ・バウシュの公演をやっていた。

 これは国立劇場のリベンジ!と思い、チケット販売の窓口に行ってはみたものの、パリでもピナの人気は高く、当然売切れ。二度目もピナとヴッパタール舞踊団には出会えなかった。

  

 三度目で、まさか自分がピナ・バウシュの『春の祭典』を踊るなんて、そのころまったく想像もしていなかったし、今だって自分がドイツ表現主義の森に足を踏み入れたこと自体信じられていない。結局、ピナ作品を見る前に踊るという事態になるなんて!

 市田のテクニックのクラスの後に、パートナーのトーマスの表現のクラスとなった。コンタクト・インプロヴィゼーションとか感情を身体で表現するようなワークもやったけど、一番強烈に身体自体が記憶しているのは、『春の祭典』を参加者全員で踊ったこと。

 集まったメンバーもさまざまで、バレエ畑の人、ジャズダンス、コンテンポラリーの人、それこそ舞踏の田中誠司さんとはここで出会った。市田のクラスのバーレッスンで、後ろに田中さんがいて一緒にレッスンしたことが今でも瑞々しい像として蘇る。

 

 『春の祭典』といったって、ほんの数小節のフレーズだけど、みんな必死。その時の一人一人のムーブメントのエネルギーが呼応しあって、そこの空気の密度が濃くなって、一人一人の動きが一つの大きなムーブメントに発展し行く感触がたまらなかった。

 奇跡の時間のように感じていたら、トーマスが「京美、見てよ。見てよ」って

少し興奮したような声で私たちの踊りを見ていたように感じた。

 

 『春の祭典』は、市田にとって特別な作品。彼女は「生贄」を踊ったのだ。きっと、音楽を聞くだけでピナと過ごした濃密な日々、ダンサーとしてはラッキー(市田は良く使う言葉)な歩みだったとはいえ、ピナのカンパニーでの苦しかった日々、さまざまな感情が起きていたのではないかと想像していた。

 


Pina Bausch - répétition Sacre du Printemps - YouTube

 

 『春の祭典』の動きを身体で感じようとする。動きを覚えて動こうなんてできない作品だと、自分でやってみて初めて思い知る。自分の意識のようなものが身体の中に埋もれてゆくような感覚だった。

 ストラヴィンスキーの音とトーマスの声とそこにいるダンサーたちのエネルギーが

何かを生み出しているという感覚に虜になってしまっている自分がいた。

 そこにいたダンサーは二度と同じメンバーでは集まれない。数人しかそこにいた人のことも覚えていない 何人くらいいたかも覚えていない。

 十数人だったと思うけど、その十数人の思い、感情と動きが空気の塊のようなものになってゆくプロセスを感じた濃厚な時間だった。

 


Stravinsky- Rite of Spring "Opening" - YouTube

 (WSで踊ったのは映像の6分5秒くらいのところから)

 

 まさか自分の意志ではなく参加したWSに何年も通い続けるとは思っていなかったし、市田にインタビューをして文章をしたためることになるとも考えていなかった。

ましてや、市田の東京での活動の手伝いをすることになるなんて、神様がいたずらしたとしか思えない(笑)

 理由は?と聞かれたら、ちょっと恥ずかしくてここには書かない(笑)

お知りになりたい人はWSでお待ちしていますので、その時にお伝えします。

 

 ということで、この度東京でWSを開催することとなりましたので、ご案内も兼ねて

市田との最初の出会いについてつづろうと思った次第。

 

市田京美ワークショップ@新宿ご案内>

 

「立つ」「歩く」「呼吸する」という

ムーブメントの基本を見つめ、

長年ピナ・バウシュの創作活動を共にした

市田京美が、ピナのスピリットと

踊る身体の基本をお伝えするWSです。

 

 ピナの世界にご興味のある方はもちろん、初心者、ダンス未経験者、

さまざまな表現活動に関わっている方、からだの意識を変えたい方など

特にダンス経験を問わず参加可能です。

 

 もちろん、ダンスをされている方も大丈夫です。

いままでの自分のからだとは違う世界を感じることができるかもしれません。

 そして、二度と出会わないかもしれない人たちとの

大切な時間を共有してみませんか。

 

 

日時:3月28日土曜日 12時半から14時半

     29日日曜日 12時半から14時半

定員は各日15名(予約制)

 

運営上の都合で、予約制とさせていただきます。

スタジオの環境上、人数に限りがございますので、お早めにお願いいたします。

できるだけ参加者の方には、充実した時間を過ごしていただけるように

心がけたいと思います。

慣れない動きもあるかと思いますが、心とからだを解放して動いてみてください。

いままでと違う自分のからだに出会えますよ☆彡

 

受講料(2時間クラス):一般  3,500円

           大学生 2,500円

           中高生 2,000円

    一般の方二日間通し券 6,000円

        親子参加一日 5,000円

 

※二日間の通し券は、参加初日(28日)に二日分お支払をお願いします。

場所:ブラッツスタジオ シアターブラッツ内のスタジオです。

 新宿区新宿1-34-16 清水ビルB1

 電話番号:03-3353-1868

 アクセス:丸ノ内線 新宿御苑駅(3番出口)から徒歩3分

      副都心線 新宿3丁目(C7出口)から徒歩5分

      JR・西武新宿線 新宿駅 徒歩15分

 元厚生年金会館が道路を挟んで反対側にある建物の地下一階です。

 

地図:http://www.theater-brats.jp/CONTENTS/bbs_access.html

 

入室は、12時から可能です。受付もいらっしゃり次第いたします。

15時までに退室をお願いいたします。

 

【申し込み先】

池田愛市田京美東京マネージャー)

 メール:Aikosoleil@aol.com

    もしくは、

     Aikosoleil@gmail.com(「市田WS」とタイトルをお願いします。)

 まだガラケーなのでラインはやっておりません。申し訳ありません。

 

<FBページ> 

池田愛子:https://www.facebook.com/aiko.ikeda.1401

     

市田京美ダンスワークショップ(池田が管理しています) 

          https://www.facebook.com/Kyomi.Ichida

  

 

 FBページからのアクセスの場合は、メッセージでの

お問い合わせ、申し込みをお願いいたします。

 

また、同日程の夕方17時30分から19時まで

田町のアーキタンツスタジオでは、ダンス経験者対象の市田京美WS,も開催されます。

新宿のクラスを満喫して、もう少し動きたい方はどうぞそのまま田町まで

足を運んでください。