Salle d’Aikosoleil

バレエ史についての備忘録 日々の食について

17歳を迎えた娘のために~思い出の詰まったベイクドチーズケーキ♪

母との思い出の詰まったベイクドチーズケーキ

 ここのところ心が痛むことがいろいろ重なって、私でも凹むことがありますw

こんな時はケーキを焼くのに限ります。ちょうど娘の誕生日がハローウィーンだったこともあり、彼女の希望を聞いたら、「ベイクドチーズケーキ!」と言うので、一日遅れで焼いています。

 このチーズケーキは、母と一緒に作った思い出が詰まったケーキ。だから、娘にも「いつか教えるね。」と言うと、「うん!!」と嬉しそうに答えてくれました。

 作りながら、なんとなくあの世の母に愚痴ってみたりして。

「こんなことがあってさ~、ママだったらどうする?」みたいな感じw

 

 母のこだわりが詰まったこのチーズケーキ。

まず、一番下になる生地に使うビスケットを砕く時には、必ずすり鉢を使います。

なんかすり鉢が切れてるw

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 母は、グラハムビスケットを使っていたけれど、なかなか手に入らないので、

私はスパイスのたっぷり入ったスペキュロスのビスケットを使います。後からシナモンを入れなくても良いので便利(*^^)v

 

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 ビスケットを砕くと、母の声が聞こえます。

「もっと粉状になるまですらないと。雑ね~」と(;'∀')仕事がとても丁寧な人だったので、良く注意されました。スポンジの生地の時もかなり泡立てをきちんとさせられました。そんなプロセスを丁寧にすれば、ケーキは美味しく仕上がるんですよね。

 習っているときは、「細かいな~」と思っていましたけど、今となってはありがたいです。私も娘に言うのかな、「もっと細かくすらないと」ってね(*^▽^*)

 そろそろオーブンから良い香りが漂ってきました。

 焼き上がりはこんな感じ。本当はちゃんと盛り付けて写真を撮って、投稿した方がよいのかもしれないけど、私はこの型に入った姿が好き。舞台だとゲネプロみたいな感じでww

 焼きたてはふわふわのスフレのようです(*^▽^*)

 美味しそうに焼けて、心もスッキリw

 

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 本番は、明日のお楽しみ♪冷蔵庫でしっかり冷やして、いただきましょう☆彡

 

 

 

 

 

<歴史も生もの>~19世紀のバレエ技術の発達についての思索♪

バーレッスンが日常のレッスンの中で定着したのはいつ頃からでしょう。

 バーレッスンを描いた絵と言うと思い浮かぶのは、やはりドガの絵でしょうか。ドガが描いたオペラ座の踊り子たちの絵は、バレエ文化の中心地がフランスからロシアに移ったころのフランス。

 時代の雰囲気としては、ダンサーの質、バレエ作品の質が低下しつつある時代と言われた19世紀後半です。あくまでも、「雰囲気」ですから、本当は頑張ってた振付家、ダンサーもいたはずです!

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 近々に、またバレエ史のお話しをする機会を頂き、日々頭の中がいろんな時代を駆け巡っています(#^.^#) 

 

 ちょっと、ボリュームのある前菜になりますが(笑)

 

 「バレエの発祥」とか「バレエの起源」は?

 

 さまざまなバレエ史、舞踊史の本を紐解いてみると、一般論としては「イタリアのルネサンス」というのが定説です。

 でも、細かく史料、資料を見てゆくと、そう単純でもないような感じがします。私は大学で教鞭と取るとか研究機関で働くとかいうレヴェルでの研究者ではないので、いろんな古の文献に触れている立場で、「そう単純じゃないな~」と思うだけなのですけどね(#^^#)

 

 そして、またまた偉そうですが(;'∀')バレエ史に関して申し上げるなら、ネット情報でも書物の文献でも、一つのデータ、考え方に囚われないことが大事です。

 例えば、ルイ14世の時代のバレエのことを学ぶなら、その当時の人が書いたものに触れ、その時代に生きた人の感覚、考え方、社会的な常識などを知ることが大事かと思います。

 

 歴史は単に過去の書かれたものではなく、生ものだと考えているのです。

 

 17世紀のルイ14世時代の時代に生きたイエズス会士メネストリエが記した本がありますが、こちらのタイトルが興味深いです。1682年にパリで出された本です。

  

 

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 本の題名が

 Des Ballets Anciens et  Modernes selon les regles du theatre

日本語に訳してみると、

 「演劇制作のさまざまな規則に基づく、古くからのバレエと新しいバレエについて」

 このタイトルを見ただけで、「ん?」と気になるのが、Modernes と言う言葉。

17世紀の人から見た<Moderne モダンな、新しい>ってどんな感覚だろう?と言ったことから私の思索は始まるのです。

 

 さてさて、お話はメインディッシュ!

 

  19世紀のイタリア、フランスのでバレエ技術の進歩というと、バーレッスンの普及とトーシューズの発明があげられると考えられます。

 その背景には、国立、王立のバレエ学校が18世紀半ばくらいからヨーロッパ、ロシアなどでつぎつぎと設立され、言い方が少し悪いけれども、バレエダンサーの大量生産の必要性が高まった時代とも言えるでしょう。

 これからご紹介する映像は、19世紀のロマンティック・バレエ時代を代表する振付家の一人、デンマークのオーギュスト・ブルノンヴィルの『コンセルヴァトワール』という作品です。

 

www.youtube.com

 

  この作品は1849年にブルノンヴィルが故国のデンマークで創作したものです。テーマは、ご覧のとおり、タイトル通り「コンセルヴァトワール」(注:コンセルヴァトワールは国立の芸術専門学校のことですが、この場合は、バレエ学校の意味)です。ブルノンヴィルは、踊りの修業のため1820年頃にパリで勉強をします。その時の先生が、オーギュスト・ヴェストリスという人でした。その先生の教室の思い出をもとにして作った作品と伝えられています。

 

 ここで申し上げておきますが、バーレッスンはルイ14世の頃の宮廷バレエの稽古にはありませんでした。

 

  私が知っているバーの絵で一番古いものはこれです↓

 1820年にミラノで出版されたイタリア人舞踊教師カルロ・ブラジスの書いたバレエの教本の挿絵です。 

 

 

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 お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、1820年頃というのがどうもバーレッスンのことを考える上でポイントとなるかな?と私は考えています。

 一方で、トーシューズも一番この道具を有名にしたのは、1832年に『ラ・シルフィード』を踊ったマリー・タリオーニというバレリーナでした。でも、「つま先で立つ」という技術は、19世紀に入る頃にはいろんな踊り手が試していたようです。

 

 次の二つのシューズの写真を見てください。

 

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 左は、マリー・タリオーニがとても大切に育てたというエンマ・リヴリーというバレリーナが履いていたトーシューズで、右側がアンナ・パヴロワのトーシューズです。

 リヴリーのものは、1860年頃のもので、パヴロワのは1914年ころのもの。50年くらいの間に、トーシューズもかなり変化しているのがわかると思います。トーシューズの変化は、つま先で踊る技術の進歩につながります。

 

 リヴリーが履いていたものは、靴と言うよりスリッパのような形で、今のバレエシューズの方に近いですね。このシューズの場合は、つま先に厚紙や綿などを詰めて、立ちやすいようにしていたようです。

 パヴロワのものは、イタリアの靴職人ニコリーニ製で、今のトーシューズとほとんど変わらないものです。

 もっと大きくするとこんな感じ。

 

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 これを履いて『瀕死の白鳥』とか踊ってたんですね~♪

 

 デザート的に☆彡

 

 トーシューズとバーレッスンには直接関係あるようなないようなものですが、ちょっと面白いものを発見したのでご紹介します。

 これは1800年頃の器具みたいなのですが、なんでしょう?人間ていろんなもの考えますね(笑)

 

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 これは、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館所蔵の木製のTourne Hanche

文字的には、股関節回旋器という意味で、ターン・アウト促進器具のようです。

 使い方は、上部の板に踵を固定して、動く方の板で足を外旋させるというものらしい。器具の名前の通りターン・アウトは、バレエをされている方ならご存知のはずですが、この器具で実際ターン・アウトをしようとすると、足首からひざ下だけで180度開くことになりますね。当然この器具によって関節の故障が問題となったようです。「股関節回旋器」という名前通りに使えば問題ないはずなのですが(;'∀')

 

 でも、1845年頃の風刺画(下を見てください)のようなものがありますが、そのキャプションに「ダンサーが成功するためには、足を壊さないといけない」などと書いてあるのです。

 

 今では、解剖学的にターン・アウトの指導が世界的にも定着していますが、こんな時代、もしかしたら、日本だって見様見真似のころはこんなものだったかもしれません。

 人間て、いろんな失敗を繰り返しながら進歩、進化しているのでしょう。

 

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 食後のお飲み物として~今回のまとめ♪

 

 今の段階で、バーレッスンの定着とトーシューズを履いて踊る技術の進歩との関係性について、私自身確固たる資料を見つけていません。

 

 ですので、あくまでも仮説ですが、1820年頃にはバーレッスンがヨーロッパで日常のクラスの中で定着していたということと、20年以降長くバランスを保つ」とか「回転する」といったつま先で踊る技術が進歩する中で、トーシューズのつま先も硬いものが開発されていったという事実は認められます。

 

 身体的な技術の進歩と装身具の面で身体を支える技術が相まって、素晴らしい結果としてロシアでの華々しいバレエ文化の開花、プティパ作品の誕生と言えるかもしれません。

 

 そして、「歴史は生もの」と言いましたが、今日このブログを書いた後で、突然先ほどお話しした「股関節回旋器」が、実は別の用途に使われていたという新事実を発見された方は、ヴィクトリア&アルバート博物館までお知らせしたくださいね(笑)

 

 こちらです↓

 ヴィクトリア&アルバート博物館のHP

 

www.vam.ac.uk

 

 ちなみに、一応私は嘘つかないようにしています。ついたと気づいたらすぐに文章とかは直します。

 でも、情報がたくさん溢れますので、なかなか追いつかないところもあります。ですので、一度読んだブログも時々更新したりしますので、たま~に確認してくださいね☆彡

 そして、「この人、間違ってる!」と思ったら、ご遠慮なくコメントしてください!


 

 

 

 

 

 

 

ニーナ・アナニアシヴィリの『瀕死の白鳥』@みなとみらいホール

不死鳥のごとき白鳥☆彡

2分の舞のために、みなとみらいまで東京の板橋から出かけました。

それほどに見ておきたかったニーナの瀕死の白鳥。

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サントリーホールを想わせるパイプオルガンが出迎える空間で、

ピアノとヴァイオリンの音色をまとうように

ニーナはその時間を生きていました。

 

踊ったとか舞ったとかそういうのではなく

その時間だけ白鳥になっていた。

 

死に瀕していても、

不死鳥のごとき強さを蓄え

指先は名残惜しむように水と戯れ

足先は、心の振動を小刻みに震わせ、

その波動は湖に命の弧を幾重にも描くよう。

 

この時間に、

この踊りを許された踊り手の身体に

踊りつないできた踊り手の魂が宿るように

そんな壮大さと繊細さとが

共鳴し合う静謐な空間に

その命は尽き果て、再び甦った。

 

www.youtube.com

 

www.youtube.com

 

https://www.youtube.com/watch?v=QMEBFhVMZpU

 

 

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Anna Pavlova 1909年頃 ベルリン (所蔵:ヴィクトリア&アルバート博物館)

 

<公演詳細>

『ニーナ・アナニアシヴィリ~瀕死の白鳥 in コンサート』

2015年9月11日金曜日 12時10分開演

ピアノ:青柳晋

ヴァイオリン:川久保賜紀

バレエ:ニーナ・アナニアシヴィリ

横浜みなとみらいホール 大ホール

【プログラム】

ピアノソロによる

1、バレエ『薔薇の精』より

  C.M.v.ウェーバー:『舞踏への勧誘』

2、バレエ『ㇾ・シルフィード』 映像とともに

 F.ショパン

 ワルツ第11番 変ト長調 Op.70-1

 前奏曲第7番 イ長調 Op.28-7

   マズルカ第23番 ニ長調 Op.33-2

   ワルツ第7番 嬰ハ短調   Op.64-7

  ワルツ第1番『華麗なる大円舞曲』Op.18

ヴァイオリンとピアノによる

3、バレエ『ペMトルーシュカ』より

I.ストラヴィンスキーペトルーシュカ』より

ロシアの踊り

4、バレエ『ツィガーヌ』

M,ラヴェル「ツィガーヌ」

 

5、バレエ『瀕死の白鳥』 C.サン=サーンス

 

 

 

日本ダンス医科学研究会 特別セミナーに参加☆彡

国際ダンス医科学研究会会長 ジャネット・カリン氏による特別講演

 今年の四月にパーソナルストレッチトレーナーの勉強を始め、第一段階の資格を取得して以来、学生時代の友人が口コミで広げてくださったことやバレエ教師の友人の生徒さんなど、おかげさまでたくさんの方の身体を施術させていただいています。

 

 指導トレーナーの「身体に正解はない。クライアントさんの身体が教え、導いてくれることに敏感に反応して、その個々の身体へのアプローチをすること」という教えを胸に日々過ごしています。

 職種によって、日常生活の姿勢や動き、そして、それに伴い心の動きも違うので、身体って本当に一人一人違うし、同じ人でも日によって違います。そんな「違い」に触れ、その人の「今日の身体と心」に敏感に反応して、時間を過ごせる充実感もあります。

 本当に周りの方に恵まれて、今回はアレクサンダーテクニック教師のM先生にお誘いいただき、バレエ指導者のY先生もご一緒に、日本ダンス医科学研究会の講演会を聴講できました。

 テーマは、事前に知らされていたのは、国際ダンス医科学研究会会長でオーストラリア・バレエ学校教師、元オーストラリア・バレエ団プリンシパルのジャネット・カリン氏による「ダンス教育と医科学」というものでした。

 当日発表されたテーマは、ミラーニューロンとそのミラーニューロンの働きによる

ミラーセラピーによるけがのケアについての具体的な内容でした。

 

 ミラーニューロンについては、こちらの本が先駆けのようです。

 

www.amazon.co.jp

 また、興味深い記事として、編集者として名高い松岡正剛氏のこちらのコラムをどうぞ!

http://1000ya.isis.ne.jp/1469.html

 

 とりとめなくて申し訳ない文章になっていますが、とにかく忘れたくないことを取り急ぎ、ここに記録しておこうと思って書いています。

  

 講師のジャネット・カリンさんは、ご自身が医者ではないけれども、ご自身のダンサーとしての経験とバレエ教師としての経験に基づいて、ダンサーを目指す子どもたちや現役ダンサーたちのケアに関わっていらしたようです。

 今やピラティスをはじめ、アレクサンダーテクニック、フェルデンクライス、ロルフィング、ジャイロキネシス、ヨガなど、バレエを学ぶ人、ダンサーたちにとって身体のケアの仕方はいろいろありますが、カリンさんは独自の研究のもとに、自らをkinetic educatorというあり方で表現されていました。

 

 講演の内容はもちろん興味深かったのですが、私のような駆け出しのトレーナーにとって、しかも医学の勉強をきちんとしたこともなく、経験上バレエやモダンダンス、バオソルやバロックダンスなど、身体の使い方はさまざま学んでいる経験値に基ずく施術を行っているものにとって、非常に頼もしい後ろ姿に感じました。

 もちろん、カリンさんはバレエダンサーとしてのキャリアが素晴らしいわけですから、レベルの差は十分理解しております(;'∀')

 ただ、今私が立っているところから将来の自分の像を眺めた時に、kinetic educatorという言葉が心の中に刻印されたのです。

 私が自分のあり方として、どのような言葉で表現するのが適切かということを今深く考えているところなので、このkinetic educatorというカリンさんの発想がとても興味深かったのです。

 

 現在、週に3,4人の施術をしています。バレエ教師、通訳、ピアニスト、フレンチシェフ、会社員、大人からバレエを習っている人など、それぞれライフスタイルが違います。必然的に、身体の使い方も癖も違うので、それぞれの身体が私の先生です。 

 それと同時に、心理的な状態にも気を配ります。その日の精神的なコンディションも

人それぞれ違います。

 そう考えてゆくと、単に「身体」と言っても、非常に「心」の状態が、コリやつまりに影響するということがわかります。

 

  たとえば、今施術させていただいている二人の方を例に気付いたことです。

  1)通訳を職業とされているIさんの場合

 長年病気を抱えていて、施術期間は長期展望。病気の治療と並行して、インナーマッスルや体幹を整えることで、身体のコンディショニングを希望されています。結果的に免疫力を上げることで、病気の治癒を目指しているという状態です。仕事が忙しいときとゆったりな時の差によって身体の変化はありますが、その精神的な緊張感が、施術者である私にはさほど影響はありません。

 

 2)バレエを大人から学んでいるKさん

 彼女の場合も、長期的にバレエが踊りやすい身体に向かいたいという展望と短期的に近々舞台があるので、舞台というテンションが身体にかかります。 

 私の感覚では、舞台に向かう身体へのテンションは意外に強くて、これは、私自身がそのテンションを経験していることもあり、施術者である私の身体にも響いてくるということに気づきました。

 その響きから何を導きだすかということを考えるのも面白いわけです(#^^#)

 

 もう一つ最近気づいたこと。「痛い」部分は、「痛み」がその部分を守ってくれているで、逆に痛くない部分で、その痛い部分をかばっているところへのアプローチを入念にすることが大事かな、というところに行きつきました。

 それも、クライアントさんの身体が教えてくださることなのですが、「痛い」部分の

痛みを取るという発想を切り替えて、「痛い」部分をかばっているところへのケアを心がける。

 そして、痛い部分は身体全体の一部なので、基本的に施術は毎回全身のメンテナンスで行います。部分的に施術しても、「痛み」や「不具合」がどこからやってきているかは、お医者様ではないので特定できないのです。

 ですから、全身をメンテナンスすることで部分的な痛みもケアするという方法が、今の私には合っているようです。そして、常に自分の知識や認識を客観的に確認する必要があります。

 そんな状況にある私にとって、ジャネット・カリンさんの考え方、身体へのアプローチの仕方は非常に共感できるもので、たくさんの学びを頂きました。

 そして、彼女が最後の方で、「いろんな専門分野の人たちが、貴重な情報をシェアすることが大切」と仰ったと思うのですが、いつも心にとめている「補い合う」という人との関係性に関してもOKを頂いたような気持ちになりました。

 ジャネット・カリンさんのプロフィール詳細はこちらです↓

http://www.australianballetschool.com.au/content/aboutus/staff/karin.html

 

  また、講演内容について書きたくなるかもしれません(#^^#)

 一言だけ書くと

 <ミラーニューロンは、動作だけではなくて、表情や感情も鏡のように映す!

 視覚が触覚を喚起する!>

 

 そして、アレクサンダーテクニック教師のM先生の細やかなお知らせとして、

 「視覚がない方々がどのように見て、感じているかを聞いた『目の見えない人は世界をどう見ているのか』伊藤亜紗著、光文社新書も合わせて考察すると、とても興味深くお薦めです!」とのことです☆

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久々のバレエ史のお話会♪

子どもたちは素晴らしい!

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 友人の主催するバレエスタジオで「バレエ史のお話をしてほしい」とご依頼をいただき久々のバレエ史のお話をしました。

 生徒さんがどれくらい集まるのかわからなかったので(だいたいいつもそんなに多くないことを想定しているw)、はじめてのスタジオということもあり、あまりメニューを考えず、手作りのバレエ史紙芝居(上の写真)と数枚のバレエ映像のDVDを携えて伺いました。それから、1725年に出版されたバレエの教本ピエール・ラモー著『舞踊教師』も(下の古い本です)。

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  昨日は小1から小3のクラス、小学校高学年のクラス、そして、中学生以上のクラスの三クラスがあるとのことで、低学年のクラスと高学年のクラスの間に一度目のトーク、それから、コンクールに出る位の子たちのためのトークと二回に分けてお話ししました。

 

 このスタジオでバレエ史のお話をするのが初めてだったので、あまり綿密に準備をせずに、生徒さんの人数もわからなかったので、その時の様子を見ながらお話を進めるという方法を試してみました。

 紙芝居を一人一人に配って、その絵をお互いに見せ合いながら、そして、その絵を元に私が少し質問する形で進めました。

 「この絵の中で見たことのあるものはある?見たことありそうなものでもいいよ」と言うと、「見たことありそう」とか「ある~」とか結構反応が良い!

 「バレエって今から何年前くらいから踊られてると思う?」というと、一人の男の子が『500年前」とほぼドンピシャリの答えを言ってくれて、私もびっくり(@@)

 あと、「じゃあバレエってどこの国で産まれたものかな?」というと、「スペイン」とか「フランス」とか、結構いい感じです☆彡 ヒントを出して、「パスタの国は?」というと、「イタリア!」とみんなが答えてくれました。

 小さな子たちなので、映像は何を見せようか悩みましたが、やはり、私のスタイルとしては、アンナ・パヴロワの『瀕死の白鳥』を見せました。 

 見終わってから、「この踊りを見て何か気づいたこととか、感じたことがある?」と質問すると、「手の動きがすごい」とか「ずっとつま先で踊ってる」という言葉が出てきました。

 そして、少しだけアンナ・パヴロワというバレリーナについて、白鳥を自分で育てていたことや『瀕死の白鳥』という作品についても説明しました。

 

 なかなか低学年の子たちの興味を惹きつけるのは難しいのですが、帰り際に何人かが、私のところにやってきて「お話にとても興味を持ちました!」と目をキラキラさせて感想を言ってくれたので、「また、お話に来てもいい?」って言ったら、「うん!」と言って帰ってゆきました。

 お母様のお一人が、「あんな古い映像が残ってるなんて鳥肌が立ちました」と声をかけてくださって、もっとたくさんお伝えしたいと思いました。

 

 男の子が一人だったので、「男性の踊り見たい?」と聞くと、ニコニコして「見たい」と言います。

 今の子って、どんな男性舞踊手が好きかな~って思ったけど、私の好みでフェルナンド・ブフォネスの『パキータ』のヴァリエーションとバリシニコフの『薔薇の精』を見てもらいました。音楽が始まったら、「あ、この音楽知ってる!」と食い入るように映像を見ながら、「すごい跳躍だな~」と真剣な表情でした。

 

www.youtube.com

 (ブフォネスのヴァリエーションは、17分55秒くらいからです。)

 

 二回目のお話の時間には、最初のお話を聞いてくれた男の子も加わって、10人ほど中学生以上のコンクールにも出場するような生徒たちが集まってくれました。最初は、おとなしい子たちなのかなと思っていたのですが、だんだんと口を開くようになって来ました。

 こちらの生徒さんたちには、紙芝居の中から自分たちで「好きなもの」を選んでもらいました。すかさず、男の子はルイ14世の太陽の姿の絵を選んで「ボクはこれ」とキープ。どうしてルイ14世を選んだかを聞いていみると、

 「僕は歴史に興味があって、バレエの基礎を作ったという王様にとても興味がありました」との答え!そこから、なぜバレエ用語がフランス語なのかというお話につながりました。

 

 そして、彼に続いてほかの女の子たちにも「自分が選んだ絵(写真)について、どうしてそれを選んだのか。または、その絵を見て何を感じたか教えてくれる?」と質問しました。

 最初は、「もう少し考えたい」と言う子が数名いたのですが、一人の生徒が話し出すと、次々と自分が選んだものについて話してくれました。

 生徒さんたちの答えに刺激を受けて、私も次のお話につなげられるという理想的な展開になりました。

 

 そして、お話がある程度落ち着いてから、友人のバレエ教師Mさんから「ところで、ストレッチの方も教えてもらえるの?」と促され、子どもたちの足を見ることになりました。ここの生徒たちは、先生がきちんと足をマッサージしているようで、とてもきれいな足をしています。

 それぞれの足を触って、一番ポジションに立った時の立ち姿を確認してもらいました。それぞれ少しずつ膝の位置が上がって、子どもたちから「立ちやすくて足がとても軽い」という感想をもらいました。

 一人一人の時間が十分ではなかったのですが、自分の足がメンテナンスによって変わることを自分の目で見て、お友達の足の形の変化を確認して、納得できたようです。

 私が一人の生徒の足を触っているときに、ほかの子たちはなんと古いバレエの教科書を丁寧にめくりながら、絵を見ては「これ、とっても綺麗」とか話しているではありませんか!

 「ここの帽子のところは、こんなこと書いてあるんじゃないの?」とか。フランス語読めなくても理解しているんですよ、想像力を働かせて!

 そして、「これ、日本語で読みたいね~」だって( *´艸`)なんと嬉しい言葉でしょうか。私の仕事が増えたかしら(笑)古いフランス語なので、なかなか大変な作業になると思うので、老後の大仕事となりそうです。

 

 子どもの好奇心と想像力は、導けばどんどん出てくるもの~と感心した一日となりました。

 見たい映像も生徒たち自身で選んでもらいました。なんと『瀕死の白鳥』を選んでくれました!

 そして、この作品が非常にシンプルな動きの連続で、派手な動きがないのにどうして、世界中の多くの人を魅了したかということを少しお話ししました。

 

 最後に、バレエを続ける上で、そして、もしバレエではない道を歩んでも大切にしてほしいことをお伝えしました。

 バレエにとって大切なことって、特別なことじゃないということ。丁寧に人と接すること。毎日、お家の人が作ってくれるお食事を大事にいただくこと。このジャガイモは誰が作ったんだろうと想像してみること。作った人のことを考えると自然と大事にいただけるでしょうと。

 そういう日常の特別じゃないことが、あなたたちの踊りにすべて出ると私は考えているということをお伝えしました。

 

 生徒さんたちの表情に、なんだか伝わったな~というものを感じました。話はじめの顔つきと終わった時の顔つきが少し変わって見えました☆彡 

 

 

 

 

 

 

 

田中誠司舞踏公演『風のない子』 日暮里 d-倉庫

誠司は脱皮して服を着た

 フレッシュな感想じゃないけれど、開けたてのワインより、少し時間が経って空気を含んだワインをじっくり楽しむ方が好きなので、27日の土曜日に立ち会った田中誠司の舞踏について書いてみる。批評じゃなくて感想。

 

 この日は、まず六本木の国立新美術館ルネ・マグリット展を夫と見る約束をしていた。乃木坂の駅で夫と待ち合わせ。最初は、田中の公演は一人で行く予定だった。

 乃木坂までの電車の中で、「今日はd-倉庫かあ。初めての場所。日暮里か~」とふといつもない不安な感じがやってきた。夫にメールを送って、「やっぱり今日一緒に舞踏みよう」と誘った。そして、美術館について田中のパートナーの佳代さんにすぐに電話をしてチケットをキープしてもらった。

 マグリット展は、人間の頭を見るようなものだったけど、何作か好きな作品だけを見て、ものすごい勢いで会場を抜ける。たぶん滞在時間20分ないくらい(;'∀')

 

 そして日暮里に向かう。うーん、六本木とは空気の軽さが違う。なんだか、大地がじっとりしている。梅雨だからじゃなくて、土地の感じがじっとりとしていて重い土の感じ。なんかいろんな霊さまたちもいそうな。

 最近は、霊さまたちをお引き受けするようにしている。「私でよければ一緒に生きましょう」って感じで。

 でも、あ~重いな~と身重のような身体を引きずり、ついでにd-倉庫はやっぱり迷子になった。めずらしく夫の方位磁石も若干狂ったようだ(笑)

 途中で、クロネコヤマトのお兄さんが道を教えてくれた。とても感じの良い人だった。道が込み入ってるから、このあたりは自転車での配達。大変だ~。

 

 ようやく会場に辿り着き、階段を上がった二階のフロアに受付があった。

 見覚えのある睦美さんの顔が見えてホッとした。彼女も舞踏家で、以前田中のパートナーの佳代さんの絵の個展の時にもお目にかかっていて印象的だった。 

 この日は受付嬢ということもあり、素敵ないでたちで受付に立っていた。彼女の周りにオレンジ色のオーラがきらきらしていた。その空気感に誘われて、客席に向かおうとすると、正面に田中のパートナーの阪東佳代の絵が現れた。田中の舞のタイトルと同じ『風のない子』という絵だ。

 そして、その絵と呼応するように、絵の左隣りに田中の師匠の大野慶人さんからのお祝いの花が飾られていた。たぶん、けむり草!けむり草をお祝いに贈るとは!慶人さんがけむり草になって舞っているようなエネルギーを感じた。あ~写真を撮っておけば良かったと後悔。

 けむり草は個人的に好きな植物。生きて呼吸しているような形をしている。この世のものとは思えない自然の造形物。凄まじい力を感じる植物。

 

 ここまでまだ客席までの入り口。客席へ向かう下り階段。

 

 客席の一番下の方に舞台が広がり、空間には中央に一枚の布(真ん中割れてて出入り可能)が見え、ちょっと能舞台を想わせる四隅に骨のオブジェが見えた。

 

 基本的に、古典芸能以外の表現は感覚で見るので、解説などは読まない。だから、

この文章に綴られたことと田中の表現したいこととが食い違うかもしれない。でも、それも私と田中の作品の交流であるので良い。

 

 白塗りの身体に黒い紋付羽織をまとった田中が現れる。動きは、いつものように心の繊細な声を表すかのようにシンプルな動きが繰り広げられる。

 舞踏の動きは、というか結局表現を突き詰めてゆくと、表現者はごく少ない言葉数でたくさんの表現の質を求めてゆく。 

 基本的に動きは、「立つ」、「歩く」、「寝転がる」、「足を動かす」、「手を動かす」、「頭を動かす」、「背骨をまっすぐにする」、「回る」、「くねらせる」、「まるまる」、「そらす」、「指を動かす」、まだあるかな。

 そんなことの組み合わせと質感をどこまで求めるかということに行きついてゆくのだと思う。これはどんな表現にも通じるものだと思う。

 そのシンプルな動きに、その表現者の「いま」が在るか、ということ。

 

 70分間の独舞に挑んだ田中の身体の集中力と精神の柳のようなしなやかな強さ。最初の三分の二くらいの時間は白黒のモノトーンに近い世界の中で、音も音楽ではなく、呼吸と足を運ぶ時のかすかな音を妨げない。

 

 気が付くと自分も田中と一緒に呼吸をしている。まるで一緒に舞うように。舞台の上の空気と客席の空気が融合する時に、表現者の世界は最後の一筆を与えられる。

 

 舞踏に意味は求めない。 

 

 でも、この舞に与えられた『風のない子』という名前はなんだったのか。

 私にとっては、この作品のテーマなのか?「また、生まれ変わる」という言葉が心に刻まれた。

 

 「生まれ変わる」ということは、どういうことなのか。私たちは日々生まれ変わっているようにも感じている。

 今日の自分は明日の自分ではない、とは日々感じるし。

 

 「生まれ変わる」=「脱皮」

  

  この文章を書くまでの数日間の間に、田中の舞を想い、そして浮かんだ言葉は「脱皮」。どちらかとうと「脱皮」。この言葉が出てくるきっかけとなったのは、田中本人からの「今は抜け殻」という言葉。 

 

 でも、私からすると「脱皮」。

 

 まるで、蝶や蛾が脱皮して、成虫になり新たな世界に呼吸すること。そして、その脱皮した直後の衝撃を想像してみた。

 

 赤ちゃんがこの世に出てきたときの産声は、この世に出てきた衝撃からの叫びなのか、恐怖じゃないか。今まで小さな空間で母と温もりのある水に守られてた世界から突如、わけのわからない空気の世界に飛び出してくるんだから当然な恐怖。

 それに近いものが脱皮後の成虫にも待っているのではないだろうか。

 

 脱皮した誠司が服を着て舞台にいる。

 

 こんなに服を着ているという、日常の姿に違和感を覚えることもめったにない。日常と非日常の迷走。

 ナイフとフォークを持って、まるで何かセレモニーに出席するような雰囲気の姿。舞台の真ん中に色鮮やかな花のオブジェ。なんだかお花畑のようなイメージも湧く。

 ナイフとフォークももはや食べ物を運ぶものではない。

 

 身体という生身のものとは違う物質的な何か。

 洋服とナイフとフォークがあることで、一層生身のものの生々しさが際立つ感じ。

 

 身体という生もの。花も生もの。命あるものへの慈しみ。

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 赤い命のあったかいものがそこにあった。

 

 こう言葉を連ねてくると、最初の紋付羽織から脱皮して「生まれ変わる」

という時間の流れを考えると、不思議と田中のパートナーの佳代の絵画の世界につながる。

 彼女の表現に認められたヤママユ蛾の生涯。

 私の勝手な想像。

 

 でも、二人の世界が呼応し合って、新たな表現世界が生まれようとしているのを感じる。

 

 

バレエ『エスメラルダ』のあらすじ【第一幕】♪

そもそも『エスメラルダ』の物語って?

 

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 エスメラルダを演じるカルロッタ・グリジ(1844年 ロンドン)NY公立図書館蔵

 

 前の記事を読み返して、バレエのことをあまりご存じない方には、少し不親切だったと反省いたしました!そして、ある意味、自分もそもそものバレエ『エスメラルダ』の物語をしっかり把握していないということにも気づき、整理することにします。

 原作は、ご紹介したようにヴィクトル・ユーゴーという19世紀ロマン主義文学を代表するフランスの作家の『ノートルダム・ド・パリ』という小説です。

 舞台は、15世紀のパリ。

 <主な登場人物>

 エスメラルダ 美しいジプシーの踊り子

 カジモド ノートルダム寺院の鐘つき男

 クロード・フロロ ノートルダム寺院助祭

 ピエール・グランゴワール 貧しい詩人

 フェビュス・ド・シャトーペル 王室射手隊長

 フルール・ド・リス(「百合の花」という意味) フェビュスのフィアンセ

 フルール・ド・リスの母親

 クロパン 浮浪者集団の長

 

 15世紀のパリの街の雰囲気や市民の生活を背景に、登場人物たちの人間模様が生き生きと描かれ、フランスのこの時代で生きるそれぞれの身分や階層の差にまで、鋭い視線が向けられています。

 

 少し脱線しますが、ずっと気になっていたこと。鐘つき男の名前が、カジモド。変な名前だなってずっと思っていたのが、この度理解できてスッキリしました。

 カジモドの名前の由来は、どうやら二つあるようです。カジモドがノートルダム寺院の前に捨てられていた捨て子で、復活祭の次の日曜日(クァッモド祭の日)に、助祭長のフロロが拾ったことから「クァッモド祭」にちなんでカジモドと名付けられたとのこと。聖職者らしい名付け方だと素直に思います。

 もう一つは、quasi-modoのquasi の意味が<ほとんど>ということで、人間としてはできそこないだけど、<ほとんど人間>というj非常に聖職者としては心の裏側を表す発想です。これはカジモドの容貌にちなんだものとの解釈です。

 エスメラルダは、恋をしてはいけない相手の王室射手隊長フェビュスに心を奪われ、そこに貧しい詩人グランゴワールやカジモドの感情も絡まってくる、、、、。

 この時代特有の主題、宿命の女(ファム・ファタール)を巡る物語とも言えるでしょう。

   

 【第一幕】<第一場>

  奇跡の中庭 Cour des Miracles(←なんと「悪党の巣窟」の意味)

  ~とある小さな広場

 

  日没。行商人たち、裕福な階級の人々、一般の市民たちも足早に市の立つ広場から去ってゆく。夜のとばりが下りるとともに、そこは「悪党の巣窟」~つまり、浮浪者たちやジプシーたち、物乞いたちなどの王国~に様変わりするから。

 グランゴワールは,広場に迷い込み、盗賊たちに捕まってしまう。貧しい詩人に金目のものがないとわかると、浮浪者たちは彼を死刑にすると告げる。しかし、彼らの掟によると、彼と結婚してくれる女性がいれば、彼の命は助かるという。とはいえ、そんなことを誰も望みはしない。そして、グランゴワールは絞首刑となる。この瞬間に、魅力的なエスメラルダがやってくる。 

 何が起きているのかを知ると、彼女は、彼の妻になることで、その不運な男を助けることに、すぐに同意する。グランゴワールは、この上ない幸せものとなる。二人は四年間結婚生活を送った。

 浮浪者たちの習慣にのっとって、グランゴワールが、割った水差しのたくさんの破片が飛び散り、お馴染みのどんちゃん騒ぎが始まる。

 ずるがしこい助祭長フロロは、ひそかにエスメラルダに欲望の炎を燃やしていて、浮浪者の親分クロタンに彼女を誘拐するようにそそのかす。そして、鐘つき男のカジモドにそれを実行するように命じる。

 悪党たちが、巡視隊に止められる。隊長のフェビュスがカジモドを逮捕するように命じ、美しいジプシーの娘を助ける。エスメラルダは、フェビュスの気品と美貌のとりことなり、深く彼に感謝する。

 フェビュスは、エスメラルダに思い出の品として彼のスカーフを渡す。そして、彼は、心優しい娘の頼みでカジモドを釈放し、彼女を口説こうとするが、エスメラルダはこっそりと立ち去る。

 

 <第二場>

 新婚夫婦~エスメラルダの部屋

 物思いに沈んだエスメラルダは、フェビュスにもらったスカーフを見つめている。

彼の名前を表すアルファベットの文字を取り出して、彼女の心にとって大切なこの言葉の前で踊る。

 グランゴワールが登場する。彼はエスメラルダを抱きしめようとする。夫としての権利を主張するかのように。しかし、エスメラルダは彼に、自分はただ彼を死から救いたかっただけで、妻になることは決してないことを告げる。この不運な”夫”は、自分の宿命を受け入れ、エスメラルダの踊りのパートナーとなることに同意する。そして、彼女はグランゴワールに踊りを教えはじめる。

 エスメラルダは、グランゴワールに彼の部屋を見せ、そこに一人残す。

 彼女は、フェビュスのことを夢想する。奥の扉がゆっくりと開き、不気味なフロロの姿が現れる。怖れおののくエスメラルダは、フロロに立ち去るように頼む。しかし、フロロはひざまずき、エスメラルダに、自分の溢れる思いを受け入れてくれように懇願する。

 彼女は軽蔑するように拒絶する。そして、フェビュスの名前を指さして、「この男性こそ私の愛する人です」と言う。

 引き下がることなく、フロロは求愛し続け、エスメラルダは短剣を抜く。カジモドが、ジプシーの娘の手を止めるが、自分に見せてくれた彼女の優しを思い出し、エスメラルダを逃がす。

「汝に災いあれ!彼に不幸が降りかかるように!」とフロロは脅し、そして、エスメラルダが落とした短剣を拾う。

 やっぱり、映像見たいですね。こちらもボリショイ・バレエ団のもので、

まだオシポワがまだ在籍中のものです。

www.youtube.com

 

【第二幕】では、いよいよ「ディアナとアクティオン」のパ・ド・ドゥが披露されます。どんな形で踊られるのでしょうね。続きは、もう少しお待ちください☆

  

 ※あらすじ原文はこちらですので、私の訳で変なところがあれば、

  どうぞご指摘下さい。

  Esmeralda. Synopsis

 

 ★ちょっとバレエ史研究者らしく、「奇跡の中庭」について★

 このCour des Miracles という言い方がいつごろからされているのは、わかりませんが、私の知る限り、というか、この言葉を見てすぐに、ルイ14世が太陽を踊った有名な『夜のバレエ』を思い出しました。

 そのバレエに、この「奇跡の中庭」が登場します。その絵がこちらになります。

 1653年に初演されたバレエ『夜のバレエ』の絵です。

 フランスのバレエ史家マリ―=フランソワーズ・クリストゥの著作『17世紀の宮廷バレエ』という本(池田所有)からの引用です。

 

 一枚目が見開きのもので、二枚目が左側、三枚目が右側で、なんとなく古い時代のパリの街の雰囲気の悪い一角の様子がわかりますでしょうか。

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「奇跡の中庭」の言い方の由来が気になります(*^▽^*)